暁降ちのころ

暁降ち(あかつきくたち)と読みます。40歳から始めた日常の整理、備忘録などを思うままに好き勝手書いています。

読了 傲慢と善良

著者 辻村 深月

婚約者・坂庭真実が姿を消した。その居場所を探すため、西澤架は、彼女の「過去」と向き合うことになる。「恋愛だけでなく生きていくうえでのあらゆる悩みに答えてくれる物語」と読者から圧倒的な支持を得た作品が遂に文庫化。

 

~~~~~以下、感想。~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

こちらも療養中に読む用として妻にリクエストして買ってきてもらった。前々からSNSの紹介等で気になっていた本作品「傲慢と善良」は、辻村深月さんの作家生活15周年記念作品とのこと。現代の婚活事情を描いた恋愛小説だと言われているそう。

冒頭、婚約者の真実(まみ)が突然姿を消したことから始まる物語は、彼女を探す架(かける)と、過去を語る真実の視点で構成されている。結局2日ほどで一気読みしてしまったんだけど、読み進めていると「傲慢」と「善良」という言葉の意味や、人間関係の複雑さ、自分自身の在り方など、深く考えさせられるテーマがいくつも盛り込まれていた。

特に印象的だったのは、東京で暮らし、30台後半まで彼女が途切れることなく女性に不自由するこがない「傲慢」と思える架と、田舎で自己主張することなく親の言うことを素直に聞いて育ち「善良」と思っていた真実の印象が入れ替わっていくシーン。若干ネタバレにもなるけど、特に前半、架と架の女友達との会話のシーンでは「うわー、女性ってやっぱりシビア」と思ってしまった。

そして、巻末で真実が、自分の傲慢さと善良さのせいで、架や周囲の人たちに嘘をついてきたことを告白するシーン。真実の葛藤と切なさが伝わってくるとても美しい文章だった。

 

色んなところで絶賛されているこの小説。婚活や恋愛だけでなく、生きていくうえでの悩みにも答えてくれる物語なのかな。人を点数化するつらさや、強い自己愛の裏に隠された傷、人との繋がりの大切さなど、現代社会に生きる我々にとって共感できることがたくさんあるのではないかと思う。そして、自分の幸せを見つけるためには、自分だけでなく、相手の気持ちや立場にも配慮することが大切だと気づかせてくれる。

「傲慢と善良」は、辻村深月さんの代表作のひとつで、2019年には本屋大賞にノミネート。2022年に文庫化され、私の手元に来たわけだ。恋愛小説として読むのはしんどいかもしれないけど、今の自分自身の価値観で何が「傲慢」で何が「善良」なのか、考えるきっかけとするには良い作品だと思いました。

ありがとうございました。