暁降ちのころ

暁降ち(あかつきくたち)と読みます。40歳から始めた日常の整理、備忘録などを思うままに好き勝手書いています。

読了 白砂

著者 鏑木 蓮

 

予備校生、高村小夜が一人暮らしのアパートで殺害された。出入りが目撃された中年男性が捜査線上に浮かぶ。心の動きに捜査の主眼を置く下谷署の目黒は、小夜を知るにつれ、援助交際の線を捨てて事件に迫った。小夜が歌に詠んだ故郷、京都府の山村で目黒が掴んだ事実とは。哀しい真相が隠された、切なさ溢れるミステリー。

 

~~~~~以下、感想。~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

いつも行く本屋で平積みされていたところを購入。帯に「あまりに哀しく、美しいラストに涙腺崩壊」と書かれていたのも少し気になった。鏑木蓮さんの作品。お名前は知っていたけど読むのは実は初めて。少々期待値が高くなり過ぎたなかで読み始めた。

序盤は「私」視点の話と「目黒警部」視点の話が交互に展開されていく。読み進めるについれてそれがだんだんと結びついていき、操作が開始されたあとのテンポは絶妙に心地いい。ストーリー後半、殺人事件の容疑者が掴まり、もう終わりかと思ったが、そこからもうひと山。家族3人が、亡くなって骨になってからようやく一緒になれたという展開は、確かにそれに気づければすごく切ない結末。

目黒と山名の刑事コンビの掛け合いも、結局ストーリーに直接の影響を及ぼすことはなかったと思うけど、どちら視点かによっても、また違うスパイスになるような気がした。俺はもちろん目黒視点で「部下と娘が仲良くなる」ことにヤキモキする父親の目黒の気持ちにはとても共感した。あとは、誕生石ならぬ誕生日石があるというのを知って、早速自分のを調べてしまった。俺の誕生日石は「トルマリン原石」だそう。へぇー。

タイトルの白砂といい、この誕生日石といい、遺骨のペンダント、鉱山のヒ素、知らないことがたくさんあって勉強にもなった作品。そういう意味では、もっとフラットな気持ちで読み始めたかったと、少し勿体ないことした気分にもなってしまったのが個人的にはやや残念。

ありがとうございました。