- (監督) 三池力也さん
- (出演) 小池樹里杏さん、内田裕大さん、三浦剛さん、小沢まゆさん、萩山沙貴さん、根本麗香さん、五十嵐山人さん他
- (上映日) 2024年2月3日
- (上映時間) 90分
以下、あらすじ。(参照 Filmarks)
モデルになるため日本に来たフィリピン人のエミリアは、フォトグラファーの未来(ミキ)と出会う。異国のふたりは互いにないものに惹かれ、求め合う。未来 はその瞬間を逃さないように写真を撮り続ける。しかしそれはどこか脆く儚く、季節が流れるように突然の別れが訪れる。そして物語は海を越えフィリピンへ─ 国の文化や人としての違いを乗り越え、認め合う強さと優しい愛の物語。
三室力也監督がメガホンを執り、フィリピンと日本という二つの国の境界線を越えて描き出した合作映画『サンパギータ』。タイトルにある「サンパギータ」とは、フィリピンの国花であり、純潔や誓いを象徴するジャスミンの一種です。本作は実話をベースに、文化や言語の壁に直面しながらも懸命に生きる人々の姿を映し出した、非常に志の高い一作でした。
【俺の評価】⭐⭐⭐(星3つ)
本作において最も惹かれたのは、やはり「異国の壁を超える」という明確なテーマ性とそのスケール感です。日本国内だけで完結する物語ではなく、フィリピンと日本の二つの国を実際に跨いでロケーション撮影が行われており、それぞれの国が持つ独特の空気感、光の捉え方、そして雑多な街並みのリアリティが画面からしっかりと伝わってきました。この地続きの国際色豊かな舞台設定があるからこそ、テーマである「異国間の境界線」が単なるお題目にならず、映像としての説得力を伴って迫ってきます。
そして、その世界観を牽引する大役を見事に果たしていたのが、主演の小池樹里杏さんです。彼女自身、フィリピンと日本の両国にルーツを持ち、日常的に複数の言語を操るバックグラウンドを持っているからこそ、言語や文化の狭間で揺れ動く「異邦人」という難しい役どころを、小細工なしの本物のアプローチで演じきっていました。彼女自身の持つ国際的な才能と佇まいが作品の核と見事にマッチしており、彼女の存在自体がこの合作映画を成立させる大きなフックになっていたと感じます。
また、昨今の映画界において時に押し付けがましく感じられてしまうこともある「多様性」の描き方についても、本作は非常に好感が持てました。声高にポリコレを主張するような過剰さは一切なく、異なる文化背景を持つ人々がごく自然に交わり、時にぶつかり、時に寄り添う姿がフラットに描かれており、その「いい塩梅」のバランス感覚は非常にスマートでした。
しかし、その一方で、一本の「劇映画」としてのクオリティに目を向けると、どうしてもシナリオの荒削りな部分が目立ってしまったのが正直な感想です。全体を通して、シーンごとの繋がりがどこか突飛に感じられる瞬間が多く、物語が次のフェーズへ移行する際の脈絡やキャラクターの心情の変化に対する説明が、圧倒的に不足している印象を拭えませんでした。
映画において、あえて多くを語らずに観客の想像力に委ねる「引き算の演出」は有効な手法ですが、今作に関してはその「多くを語らない手法」が、かえって悪い方向に作用してしまっていた気がしてなりません。特に恋愛や人間関係の描写において、登場人物たちが「いきなり別れた」かと思えば、次の瞬間には「いきなり縒りを戻した」かのような唐突な展開が繰り広げられ、観ているこちらとしてはそのスピード感と感情の飛躍についていくのが正直苦しかったです。実話をベースにした物語だからこそ、事実に引っ張られすぎて、映画的な起承転結のグラデーションや、観客を納得させるための丁寧なプロセスが疎かになってしまったのは実にもったいないと感じました。キャラクターがその決断に至るまでの心の機微を、もう一歩、上手く展開として繋げて、綺麗にまとめることができたのではないかという、シナリオへの惜しさが強く残ります。
Amazonプライムの画面を通じて、二つの国が織りなす美しいロケーションや、小池樹里杏さんの瑞々しくも説得力のある熱演には大いに魅了されました。テーマの素晴らしさや多様性へのアプローチが優れていただけに、脚本の整合性やドラマツルギーの弱さが目立ってしまった点は悔やまれますが、異国間の確かな絆を感じさせてくれる意欲作として、敬意を込めて星3つの評価とさせていただきます。
ありがとうございました。











