暁降ちのころ

暁降ち(あかつきくたち)と読みます。40歳から始めた日常の整理、備忘録などを思うままに好き勝手書いています。

読了 ほかならぬ人へ

著者 白石 一文

「ベストの相手が見つかったときは、この人に間違いないっていう明らかな証拠があるんだ」妻のなずなに裏切られ、失意のうちにいた明生。半ば自暴自棄の彼はふと、ある女性が発していた不思議な ”徴” に気づき、徐々に惹かれていく…。様々な愛のかたちとその本質を描いて第142回直木賞を受賞した、もっとも純粋な恋愛小説。


~~~~~以下、感想。~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


白石一文さんの小説はこれまでにもいくつか読んでおり、直木賞を受賞した本作もいつか読みたいと思っていました。先日、自宅近くの書店に行き、たまたま通った書棚に一冊だけ置いてあるのを発見。思わず手にとり、そのまま購入してきました。内容は「ほかならぬ人へ」と「かけがえのない人へ」の二編が収録されており、どちらも運命の相手に出会ったときの感情や葛藤が描かれています。

「ほかならぬ人へ」は、妻に裏切られた主人公が、ある女性の香りに惹かれていく物語。主人公は、自分にとって「ほかならぬ人」が見つかったときには、明らかな証拠があると信じているが、その証拠とは何なのでしょうか。香りだけで相手を決めることはできるのでしょうか。私は主人公の選択に納得できませんでしたが、それでも彼の愛情には心打たれました。あまり書くとネタバレになりますが、彼は自分の気持ちに正直に生きようとする姿勢があり、妻や家族との関係も複雑で、読者に考えさせられる部分が多いとは思います。「かけがえのない人へ」は、結婚を控えた女性が元上司と不倫をする物語。こちらは「ほかならぬ人へ」には無かったアダルトな部分が多く出てきますが、これぞ白石作品。

女性は自分の幸せを見つけるために、結婚式直前まで元上司と関係を続ける。しかし、その結果は予想外のものに…。女性の行動は非常識で自己中心的だと思うけど、それでも彼女に同情する部分はある…のかも?彼女は自分に正直ではなく、周囲の期待に応えようとしている。元上司もまた、自分の立場や責任を忘れてしまっている。二人の関係は不健全で不幸なものだが、それでも愛だと言えるのでしょうか。この本は、恋愛における正しさや幸せとは何かという問いかけをしてくれる本だと思います。登場人物たちは皆、自分の心の声に耳を傾けようとするが、それが必ずしも正しい道ではないこともある。
愛することと愛されることの間にある隔たりや苦しみを感じさせる作品。

白石さんの文体は軽やかで読みやすいけど、その中に深い意味やメッセージが込められていて、この本は独身時代に読んでたら、恋愛観や人生観について色々考えながら読めたのかもしれません。

ありがとうございました。


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