暁降ちのころ

暁降ち(あかつきくたち)と読みます。40歳から始めた日常の整理、備忘録などを思うままに好き勝手書いています。

読了 アヒルと鴨のコインロッカー

著者 伊坂 幸太郎

引っ越してきたアパートで出会ったのは、悪魔めいた印象の長身の青年。初対面だというのに、彼はいきなり「一緒に本屋を襲わないか」と持ちかけてきた。彼の標的は――たった1冊の広辞苑!? そんなおかしな話に乗る気などなかったのに、なぜか僕は決行の夜、モデルガンを手に書店の裏口に立ってしまったのだ! 清冽な余韻を残す傑作ミステリー。第25回吉川英治文学新人賞受賞。


~~~~~以下、感想。~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

読了というより、すでに読了済の作品を紹介という方が正確。またまた伊坂作品だけどお付き合いください。

これも私が大好きで定期的に読みたくなる作品のひとつ。傑作ミステリー「アヒルと鴨のコインロッカー」という第25回吉川英治文学新人賞を受賞した2006年の小説。翌2007年には濱田岳さんと瑛太さんが主演で映画化もされたらしい。ちなみにそれは見よう見ようと思っていまだに見れてない。

 

以下、あらすじから書くとネタバレにもなるけど、17年前の作品なんでご容赦を。

この作品は、仙台に引っ越してきた大学生の椎名と、椎名の隣人である河崎との現在の物語と、2年前に起きた琴美という女性とブータン人の留学生ドルジとの過去の物語が交互に描かれているカットバック形式の小説。作品の冒頭で、椎名は河崎から「一緒に本屋で広辞苑を盗まないか」という奇妙な誘いを受ける。その誘いを断りきれなかった椎名は、河崎の計画に巻き込まれてしまう。計画の背景には、2年前に起きたペット惨殺事件と、ドルジと琴美の恋愛が関係していて、それが読み進めるうちに明らかになっていく…。また作品のなかではボブ・ディランの「風に吹かれて」が度々出てくるんだけど、これが映画ではどんな感じで描かれているんだろう?といつも思う。その答え合わせをしたくないというのが、いまだに映画を見ていない理由なのかもしれないけど。

 

この作品の感想だけど、まず何よりも読み始めると伊坂さんの特徴である洒脱なユーモアと緻密な構成に引き込まれる。椎名や河崎、ドルジや琴美という登場人物たちの個性的な会話や行動が楽しく、同時に謎解きの要素もあって、2つの物語がどのように絡み合っていくのかは、最後まで目が離せない。特に印象的だったのは、ドルジのキャラクター。彼はブータンの価値観や考え方を持っていて、日本の社会や文化に馴染めない部分がある。だけど、それを悲観するのではなく、自分の信念を貫き、琴美を愛し、正義を守ろうとする。私も正直なところブータン人のメンタリティは良く知らないけど、彼の言葉や行動には、深い哲学や人間愛が込められていると感じる部分があった。

 

そしてこの小説の醍醐味。どんでん返しとも言える衝撃的な結末。これは絶対に言わないし、ここでも書かない。とにかく読んでみて欲しいから。どこかのインタビューで伊坂さんは、この作品を映画にするのは難しいと思ったと言ってたと思うけど、それくらいの衝撃。たかが小説。されど小説。登場人物たちの人生や選択に共感したり、考えさせられたり、やっぱり傑作だと思うこれは。未だに心に残ってるくらいの読後感。

 

そしてもし読み終えたなら、ぜひドルジの言葉を思い出してみてください。

ありがとうございました。