暁降ちのころ

暁降ち(あかつきくたち)と読みます。40歳から始めた日常の整理、備忘録などを思うままに好き勝手書いています。

鑑了 ラーゲリより愛を込めて

久しぶりの映画評。と言ってもこの身体で映画館に行き、長時間座ってる訳にいかないので、Amazon Prime Videoです。先週から10度以上も下がるという寒波が訪れていたため、先週末はリハビリの散歩も早々に切り上げ、温かい珈琲を手に「何を見ようかな」とサイトを開き、自身の心境とマッチするものがないかと探索を。ドラマやらオリジナル作品やら、色々探してみたものの、結局トップページに出てたこの作品を選択して映画鑑賞。前々から見たいと思ってたとかではないので、まったくのゼロベースでの鑑賞。それを前提に、事後に調べた内容を含め、以下、感想を書いていきます。

まず、この映画は辺見じゅんさんのノンフィクション小説「収容所(ラーゲリ)から来た遺書」をもとに、シベリアの強制収容所に抑留された実在の日本人捕虜、山本幡男さんの半生を描いた映画とのこと。監督は瀬々敬久さんで、主演は二宮和也さん。

タイトルにもなっている「ラーゲリより愛をこめて」という言葉は、山本さんが収容所で書いた遺書の冒頭にある言葉らしい。「ダモイ」という言葉が帰国という意味なのは知ってたけど、「ラーゲリ」というのは収容所という意味なんだね。その収容所に長期間抑留されているなかでも、家族や仲間への愛情や希望、故郷への想いを感じさせる。まぁこの山本幡男さんのことを後から調べたから思うんだけど、これを映画にするとすれば、このタイトルしかないよね。

全部で133分ある映画の見どころはどこだろうか?やはり最初に思うのは、二宮和也さんの演技。二宮さんは、山本幡男さんの若い頃から老いるまでを幅広く演じているけど、山本さんの不屈の精神や優しさ、悲しみや苦しみ、そして死にゆく姿を、繊細に表現されていた。特に、遺書を書くシーンや、仲間たちと別れるシーンは、映画館で見てたらウルっときてしまってた気がする。二宮さんはこの役を演じるにあたって、山本幡男さんの遺族や収容所の仲間たちと面会したり、シベリアの現地を訪れたりして役作りに励んだとあったけど、さすがです。

感想は人によって様々だと思いますが、これが実話であること。そしてまだ100年も経たないくらい前の出来事であること。親目線で見るとなお、戦争の悲惨さやそれによって引き裂かれる家族の辛さを感じた。そして少しネタバレになるけど、最後の遺書の部分。日本語の書物や手紙を持っているとスパイ容疑をかけられるから、仲間たちが山本さんの遺書を記憶して持ち帰り、家族に届けるシーンがあるんだけど、個人的にはこの映画はこれをメインにしても良かったのではないかというくらいだった。ちょっとこの部分については物足りなさを感じてしまったというのは正直なところ。

なおWikipedia山本幡男さんのページの最後には、以下の記載があった。

エピソードの多くは原作に基づいているが、収容所内での山本の文化活動は割愛された箇所が多く、原作にはほとんど登場しない妻のモジミとの物語が、全面に押し出されている。創作や誇張された場面もあり、モジミの人物像も、事実とは異なる良妻賢母として描かれている。先述の山本の長男の山本顕一も「正直なところ、映画はやっぱり実際とは違ってはいる」と語っている。

どうぞこの映画をきっかけに、自分なりに興味を持った部分を調べてみてください。

ありがとうございました。