暁降ちのころ

暁降ち(あかつきくたち)と読みます。40歳から始めた日常の整理、備忘録などを思うままに好き勝手書いています。

鑑了 そして、バトンは渡された

2021年に公開された映画。監督は前田哲さん、主演は永野芽郁さん。2018年に出版された瀬尾まいこさんの小説がもとになっており、同作は2019年に本屋大賞を受賞しただけでなく、TBS『王様のブランチ』ブランチBOOK大賞2018、紀伊國屋書店・キノベス!2019などで大賞を受賞しているということ、第31回山本周五郎賞で候補に選ばれていることを、映画を見終わった後に知りました。

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アマプラの「あなたへのお勧め」っぽいところにあがっていたので、ウォッチリストに登録していました。それを先週、会社の通勤中に2日かかりで鑑賞。

以下、あらすじ。(参照 Wikipedia

高校3年の森宮優子は、優しい父の壮介と2人暮し。泣きたい場面でも無駄に笑顔を振りまく優子は、その習性ゆえにクラスでも浮いた存在だった。技術不足にも拘わらず、卒業式の合唱のピアノ奏者を押し付けられる優子。一方で、「みぃたん」と呼ばれる小学生の少女の家に、梨花という新しい母親がやって来た。梨花は浪費家でお調子者だが、その一方で気立てが良く、「みぃたん」を手放せないほど愛してしまった。ある日、「みぃたん」の実父の水戸秀平が、突然ブラジルに移住すると言い出した。妻の梨花は移住を拒否して離婚。「みぃたん」と離れたくない梨花は、言葉巧みに「みぃたん」を日本に残らせ、自分の旧姓の田中姓にしてしまった。「みぃたん」が友達の影響でピアノに興味を持つと、義母の梨花は、大金持ちの泉ヶ原という老人と再婚した。泉ヶ原の屋敷にはグランドピアノがあったのだ。優しい泉ヶ原に大切にされる「みぃたん」。ところが義母の梨花は、大金持ちの生活が窮屈だと家を飛び出し、新しい結婚相手を見つけてしまった。この時、梨花が再婚した相手が森宮壮介。連れ子として森宮姓になった「みぃたん」こそが、優子の幼い頃の姿だったのだ。義母の梨花はその後に森宮家も飛び出し、行方不明になっていた。同学年の早瀬賢人や、義父の壮介に励まされ、優子は何とか卒業式のピアノ演奏を成功させた。数年後、早瀬賢人と再会した優子は、結婚を誓い合った。そんな優子の元へ、行方不明の義母の梨花から便りが届いた。実父の水戸秀平が日本に帰っていると言うのだ。実父の秀平と再会した優子の元へ、2番目の父である泉ヶ原から、梨花の死を看取ったとの知らせが届いた。実は梨花は以前から重い病気を患っていた。ブラジルに同行しなかったのも、優子を置いて失踪したのも、病気を隠すためだった。再婚を繰り返したのは、自分の亡き後、優子に最適の父親を用意するためだったのだ。やがて結婚式の日、式場には3人の父が揃っていた。3番目の父である壮介は、「親たちから渡されたバトンを、しっかり受け取れ」と、花婿の早瀬に優子を託すのだった。

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内容としては、3人の父、2人の母という形で「みぃたん」が血の繋がらない親の間をリレーされ、現在は4人目の父親である森宮壮介と暮らす高校2年生の主人公、永野芽郁さん演じる森宮優子が成長していく様子が描かれていました。率直な感想としては、親子ものは感情移入し過ぎるということもありますが、
たまらなく良かった です。

最初は、現代と過去のシーンが行ったり来たりしてて、自分自身の頭のなかでそれが繋がるまでに時間がかかってしまいましたが、高校生の優子が辛いときでも笑ってるシーンが何度か出てきたときに、「あぁ、もしかして」となりました。また、自由奔放という言葉がぴったりな石原さとみさんが演じる梨花にも、見ていてかなりイライラさせられましたが、後から考えると、それが見事に作り手の「思うつぼ」だったことが分かります。

ただし、実の父である大森南朋さん演じる水戸が、家族に何の相談もなくブラジルでの仕事を決めてしまったところは、同じ親の立場として少し「???」という感想でした。妻も子供も生活基盤はこちらにあるわけで、普通に考えると「分かりました。付いてきます」とはならないだろうと思ってしまいましたし、自分の夢を追いかけるのは勝手ですが、父親なら子供の夢も大切にしなきゃならないんじゃないか?というのがそのシーンの率直な思いでした。

とはいえ、それぞれの親から愛情をいっぱい受けて育った「みぃたん」こと優子が、結婚相手とともに親巡りの旅をするところからは、そんなことが吹っ飛ぶくらい見入ってしまいました。俺の家はまだ子供たち全員を扶養しているところですが、将来それぞれが独立し、たまの休みに家に帰ってきたときはこれに近い感情なのかな?とか、結婚相手を連れてきたときは俺どんな思いになるんだろう?とか、自分自身のことを投影しだしたら感情の起伏が止まりませんでした。

そして最後のバージンロード。俺は父親としてあんなに立派にバトンを渡すことができるんだろうか?もしかすると周りからは怪訝な目で見られてしまっていたような気がしますが、そんなことを想いながら、通勤中に思わず涙腺が崩壊しそうになってしまいました。

とにかく良い作品でした。小説もぜひ読んでみたくなりました。

ありがとうございました。