暁降ちのころ

暁降ち(あかつきくたち)と読みます。40歳から始めた日常の整理、備忘録などを思うままに好き勝手書いています。

読了 クジラアタマの王様

著者 伊坂 幸太郎

記憶の片隅に残る、しかし、覚えていない「夢」。自分は何かと戦っている? ――製菓会社の広報部署で働く岸は、商品への異物混入問い合わせを先輩から引き継いだことを皮切りに様々なトラブルに見舞われる。悪意、非難、罵倒。感情をぶつけられ、疲れ果てる岸だったが、とある議員の登場で状況が変わる。そして、そこには思いもよらぬ「繋がり」があり……。伊坂マジック、鮮やかなる新境地。

 

~~~~~以下、感想。~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

文庫化は2022年7月にされたそう。本屋で平積みされているのは知っていたが、伊坂作品以外についても守備範囲を広げていきたいという衝動から、約1年ほど手に取るのは我慢していた。それでも今年になり、次はどの小説を読もうかとブラブラしていると、やはり高確率で目に留めてしまう自分がいた。そのため、これはもう読むしかないよねとある意味で衝動買い。ちょうどこの前に読んでいたのが「サピエンス全史」という小難しいものだったため、より一層、伊坂作品の爽快感を感じながら読み進めることができた。

本作品のあらすじとなるが、「クジラアタマの王様」は、記憶の片隅に残るが覚えていない「夢」をテーマにした物語となる。主人公は岸という製菓会社の広報部署で働いているサラリーマンになるが、商品の異物混入問い合わせを引き継いだところから物語は始まる。対マスコミという構図は、もしかして伊坂さんは2024年の状況を見据えていたのかと感じるくらい、現在の週刊誌報道に辟易した現在にマッチしている。読みながら自然と岸を応援している自分がいるし、形勢が一気に逆転する場面は気分がスカッとする。ちなみにこれは作品の前半。第1章のことを書いてます。とにかく、もうこの時点で一気に作品のなかに引き込まれてしまっています。

その後は、池ノ内議員の登場で展開が変わり、小沢ヒジリというダンサーとの出会いを通じて、現実世界と夢の世界が交じり合いながらストーリーが進んでいく。。。

やはり伊坂作品おそるべし。面白くて読みやすく、サクッと読めてしまうほどの魅力がある。ストーリーのテンポの良さや、登場人物のユーモア、夢の中の不思議さなど、多くの要素が絶妙に組み合わさっている。特に間で挿絵が多く使われているが、これは夢の中の出来事をセリフなしの漫画で描いているそうで、作品全体を引き立て役になっている気がした。

最後に、読んでいて気に入った池ノ内議員のセリフをリマインド。
「仕事ができる人に仕事が集まるのは、残念ながら当然のことなんですよね。仕事ができない人の仕事は減ります。どちらも同じ報酬がもらえるとすれば、これは問題です。」

ありがとうございました。