暁降ちのころ

暁降ち(あかつきくたち)と読みます。40歳から始めた日常の整理、備忘録などを思うままに好き勝手書いています。

読了 熱帯

著者 森見 登美彦

ある日、忽然と消えた一冊の本。佐山尚一なる男が記したその本『熱帯』を求め、森見登美彦は東京へ。そこには既に手掛かりを得て探索に乗り出さんとする一団がおり、彼らもまた「不可視の群島」「海上を走る列車」-そんな摩訶不思議な光景に心を囚われていた。全国の10代が熱狂、第6回高校生直木賞を射止めた冠絶孤高の傑作。


~~~~~以下、感想。~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


森見さんといえば、『夜は短し歩けよ乙女』や『有頂天家族』など、京都を舞台にしたファンタジックというのか、ユーモラスな作品を書く人というイメージの作家でした。読み終えてみて、今回の『熱帯』も、私のなかでは期待を裏切らない怪書だったような気がします。

以下、ネタバレも含みます。すいません。

物語の主人公は、作家として活動する森見さんご自身。主人公は、ある日、沈黙読書会という奇妙な催しに参加する。そして、そこで出会った白石さんという女性から、『熱帯』という本の話を聞くのだけど、この本は、1982年に出版された佐山尚一という謎の作家の唯一の作品で、南洋の孤島に流れ着いた男の奇妙な冒険譚を描いている。ただし、この本には不思議な力があり、読み終える前に姿を消してしまうそう。。。

白石さんは、この本の秘密を解き明かすべく、組織された学団という読書会に参加していたことを明かす。学団のメンバーは、それぞれ記憶を頼りに『熱帯』の復元に努めていたが、物語のある個所までしか思い出せず、そこから先は全員の記憶が食い違っており、そこで白石さんは、森見さんに協力を求める。森見さんは興味をそそられ、白石さんと共に学団に加わり、そこで出会った中津川さんや新城くん、千夜さんという個性的な登場人物たちと共に、『熱帯』の謎に挑んでいく。その過程で彼らは次々と奇妙な現象に遭遇するのだけど、例えば暴夜書房という神出鬼没の古書店や、部屋の中の部屋という不可思議な空間。読み手も途中から、あれ?これは誰の視点でどこにいるの?いつのお話なの?って感じになる。まさに森見ワールドという感じ。

どこかのレビューで、何度も読み返して徐々に腹落ちする作品と見た気もするが、半ばこちらも混乱とともに読破した印象が強く、もちろん良い意味で結構な疲労感。なので、しばらくはおなかいっぱいです。しかし本作品、2019年には本屋大賞や高校生直木賞などを受賞やノミネートされてるんだってね。そう考えると、今の高校生って凄い。

ありがとうございました。


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