暁降ちのころ

暁降ち(あかつきくたち)と読みます。40歳から始めた日常の整理、備忘録などを思うままに好き勝手書いています。

読了 クスノキの番人

著者 東野 圭吾

恩人の命令は、思いがけないものだった。

不当な理由で職場を解雇され、腹いせに罪を犯して逮捕された玲斗。
そこへ弁護士が現れ、依頼人に従うなら釈放すると提案があった。

心当たりはないが話に乗り、
依頼人の待つ場所へ向かうと叔母だという女性が待っていて玲斗に命令する。

「あなたにしてもらいたいこと、それはクスノキの番人です」と・・・。

そのクスノキには不思議な言伝えがあった。


~~~~~以下、感想。~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
クスノキの番人」という小説は、簡単に言えば、
願いが叶うと言われているクスノキの番人を任された青年と、クスノキのもとへ祈念に訪れる人々の物語。

読了しての感想としては、次のような感じでしょうか。

東野圭吾さんの作品、実は初めて読むのだけど、
イメージとしては殺人事件や犯罪が絡むミステリーという印象。
なんだけど、この作品にはそんな雰囲気のことが一切出てこない。
どちらかといえば心温まるファンタジー作品で、
クスノキの不思議な力や秘密に興味を持ちながら読み進めることができました。

主人公の玲斗は、不幸な出生や過去の経験から自分に自信がなく、社会に馴染めない青年。
クスノキの番人として働くうちに、祈念に訪れる人々の想いや悩みに触れて、
自分の価値や生き方を見つけていくんだけど、その玲斗の成長過程が良きかな。

あと、叔母の千舟との関係も印象的。
千舟は、玲斗を保釈させてクスノキの番人にした理由を最初は明かさないんだけど、
段々と玲斗に信頼を寄せていく様子が伝わってくる。

また千舟も玲斗に自分の過去や想いを打ち明けていき、
最終的には血縁以上に心を通わせる家族に…。(ネタバレですいません)

クスノキに祈念することで、人々の念が伝わる仕組みは興味深かったです。
念は良いことも悪いことも伝えてしまうため、日頃の自分の生き方や考え方が試されるようで、
また、念は血縁者にしか授受できないというルールもあり、
それは血縁だけではなく心の繋がりも必要だからなのではないかと…。

結末は、玲斗がクスノキに祈念することで、千舟の願いが叶うという展開。
最後の方は玲斗と千舟の絆が感じられる感動的なストーリーで、一気に読み進めてしまいました。

レビューで読後感が良いとは見てたけど、まさにそのとおり。
ありがとうございました。