暁降ちのころ

暁降ち(あかつきくたち)と読みます。40歳から始めた日常の整理、備忘録などを思うままに好き勝手書いています。

鑑了 コーヒーが冷めないうちに

小説「コーヒーが冷めないうちに」「この嘘がばれないうちに」を原作に映画化された作品だそうです。公開は2018年。監督は塚原あゆ子さん、主演は有村架純さん。2019年に第42回日本アカデミー賞話題賞を受賞。元々は舞台作品として大好評だった作品らしいです。

ただし俺の場合ですが、そのあたりの事前情報はまったくなく、ただただアマプラのおすすめに出てきたので鑑賞したという感じです。強いて言うなら、TikTokで「泣ける映画」として紹介されてたので、少し気になってたくらいでしょうか。

 

以下、あらすじ(参照 Filmarks

時田数(有村架純)が従兄で店主の時田流(深水元基)と切り盛りする、とある街のとある喫茶店「フニクリフニクラ」。そこには、不思議な都市伝説があった。それは店内の【ある席】に座ると、望んだとおりの時間に戻ることができるというもの。ただし、そこにはめんどくさい……非常に面倒くさいいくつかのルールがあった。今日も不思議な噂を聞いた客がこの喫茶店に訪れる。どんなことをしても現実は決して変わらない。それでも過去に戻り、会いたかった人との再会を望む客たち。そこで彼らを待っていたものとは?そして、主人公・時田数に隠された真実とは?

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最初は波留さんが演じる清川二美子が過去に戻りますが、ここで”望んだとおりの時間に戻る”ための、だいたいのルール説明がなされます。そのため、舞台を見ていなくても、小説を読んでいなくても以降のストーリーにスッと入っていける構成となっていました。

次に松重豊さん、薬師丸ひろ子さんが演じる房木康徳と高竹佳代。お二人はご夫婦なんですが、佳代は認知症を患い、房木が夫だとは認識していません。それでも、佳代は夫に手紙を渡したいと喫茶店に足しげく通っています。そして、ある夜、過去に戻った房木は佳代から手紙を受け取り、佳代の思いを知りますが、このあたりはお二人の演技力に見入ってしまう場面です。

次に吉田洋さんが演じる平井八絵子というスナックのママ。長い間、家出同然に実家を飛び出し、それから会うことを避けていた妹の久美が交通事故で亡くなってしまいます。当初は気丈に振舞っていた八重子ですが、きちんと久美にお別れをしたいと過去に戻り、事故当日に外出しないよう久美に訴えますが、起きてしまったことは変えられず、現在に戻っても久美は亡くなったまま。個人的には一番感情が盛り上がった部分かもしれません。

最後はラストの部分。有村架純さんが演じる時田数が自身の母親に会いに過去に戻ります。詳細を書くと相当なネタバレになってしまいますので、詳しくは割愛しますが、親と子供の話は、色んなものを投影してしまうので、反則級に心に刺さってしまいました。母親役の石田ゆり子さんも、セリフはここくらいなのですが、とてつもなく良い演技をされています。

 

時間旅行といえば、我々世代で思い出すのは「バックトゥザフューチャー」でしょう。子供のころ、シリーズ3まで何回見てもワクワクできた記憶があります。それに比べると本作品の時間旅行の仕方はとてもお洒落。部隊が喫茶店。そしてキーアイテムがコーヒーというのがいいですよね。

過去には戻れますが、過去を変えることはできないという設定も良かったです。俺自身も後悔していることや、やり直したいことはたくさんありますが、過去は変えられないからこそ、この映画を見終わって、現在から自分を変えていこうと思わせてくれるメッセージを感じました。

とはいえ『もしも過去に戻れるならいつに戻りたいか』と考えたとき………これまで何度も書いている大学生から社会人2~3年目というモラトリアム期間後期は除いて考えた場合、たぶん映画の最後に出てくる赤ちゃんを見たせいですが、俺は4人目の子供が生まれたときかなと思いました。当時は「稼がないと」という思いばかりで、馬車馬のような仕事人間でしたが、今思えばお金より時間。しかも子供たちとの時間の方が大事だったなと後悔しているからです。

一部では、きっと先に舞台を見たり小説を読んだりしている人からは酷評されてしまっている本作品ですが、私は十分に楽しんで見ることができました。反対に小説はどんな内容なのだろうと気になったので、今度書店でも探してみたいと思っています。

ありがとうございました。