著者 朝井リョウ
自分が想像できる”多様性”だけ礼讃して、秩序整えた気になって、そりゃ気持ちいいよな。
息子が不登校になった検事・啓喜。
初めての恋に気づく女子大生・八重子。
ひとつの秘密を抱える契約社員・夏月。
ある事故死をきっかけに、それぞれの人生が重なり始める。
だがそのつながりは、”多様性を尊重する時代”にとって、ひどく不都合なものだった。
読む前の自分には戻れない、気迫の長編小説。
~~~~~以下、感想。~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「正欲」というタイトルは、一見すると性欲という意味に見えるが、実は違う。
朝井リョウさんが、あとがきでこの言葉の由来を説明している。
正欲とは、「自分の本当に望むものに向かって行動すること」。
つまり、自分の感情や欲求を素直に表現することだそう。
この小説では、さまざまな登場人物が、自分の正欲に向き合う物語が描かれている。
例えば、同性愛者であることを隠している男性や、夫婦関係に悩む女性、自分の性別に違和感を持つ少年など。
彼らは、社会や家族や友人からの期待や偏見に翻弄されながらも、自分の本当の気持ちを探していく。
私はこの小説を読んで、多様性という言葉の意味を考えさせられた。
多様性とは、単に異なるものを受け入れることではなく、それぞれの個性や価値観を尊重し合うことだと思う。
そして、それは自分自身にも当てはまる。
自分の正欲を見つけることは、自分を認めることでもあるから。
この小説は、登場人物たちの感情や思考が細かく描写されていて、読んでいて引き込まれた。
特に印象的だったのは、最後の章で登場する女性。
彼女は、自分の正欲を見失ってしまった人間の象徴だった。
彼女の言葉には深い哀しみが感じられた。
「正欲」は、私たちに自分の本当の願いや幸せを問いかける小説だと思う。
読んでみて損はないので、ぜひチェックしてみてください。
ありがとうございました。