暁降ちのころ

暁降ち(あかつきくたち)と読みます。40歳から始めた日常の整理、備忘録などを思うままに好き勝手書いています。

読了 52ヘルツのクジラたち

著者 町田 そのこ

52ヘルツのクジラとは、他のクジラが聞き取れない高い周波数で鳴く世界で一頭だけのクジラ。何も届かない、何も届けられない。そのためこの世で一番孤独だと言われている。自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれる少年。孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会い、魂の物語が生まれる。


~~~~~以下、感想。~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
この本は、貴瑚という26歳の女性と、52という13歳の少年を中心に展開される物語。貴瑚は、毒親にあたる実母からネグレクトを受けてきた過去を持ち、自殺を図ろうとしていたところを、岡田安吾という男性と美晴という女性に助けられる。そして彼らの勧めで、大分県の海辺の町に移り住むことになる。

そこで、貴瑚は、母親から虐待を受けて逃げてきた52と出会い、彼を匿うことになるのだが、52は、言葉を話せない代わりに、他人の心や感情を読み取る能力がある。貴瑚は、52に「52ヘルツのクジラ」という名前をつける。それは、他の鯨が聞き取れない高い周波数で鳴く、世界に一頭しかいないクジラのこと。貴瑚は、自分と同じように孤独な52に惹かれていく。

一方、この物語には、他にもさまざまな登場人物がいる。例えば、貴瑚の幼馴染である悠太郎や、貴瑚が働くカフェのオーナーである藤井や、貴瑚がSNSで知り合ったミツルや、52がオンラインゲームで仲良くなったシュウなど。彼らもまた、それぞれに孤独や苦しみや希望を抱えている。そして、彼らは、貴瑚や52と関わっていく中で、自分自身や他人や社会と向き合っていく。

この本は、孤独や愛や生きる意味など、普遍的なテーマを扱っているが、それを現代社会のさまざまな側面から切り取って見せてくれる。例えば、SNSやオンラインゲームやネットニュースなど、我々の日常に欠かせないものが、登場人物たちの人生にどのように影響しているかが描かれている。

本作品は、登場人物たちの心の動きや関係性が細やかに描かれていて、読者に共感や考えさせられる場面が多くあるのではないかと思う。また、孤独に鳴くクジラが魂のつがいを見つける過程も感動的だった。心が温まる一冊。

ありがとうございました。