著者 凪良 ゆう
小学生の百音と統理はふたり暮らし。朝になると同じマンションに住む路有が遊びにきて、三人でご飯を食べる。百音と統理は血がつながっていない。その生活を“変わっている”という人もいるけれど、日々楽しく過ごしている。三人が住むマンションの屋上。そこには小さな神社があり、統理が管理をしている。地元の人からは『屋上神社』とか『縁切りさん』と気安く呼ばれていて、断ち物の神さまが祀られている。悪癖、気鬱となる悪いご縁、すべてを断ち切ってくれるといい、“いろんなもの”が心に絡んでしまった人がやってくるが――
~~~~~以下、感想。~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
凪良ゆうさんについては、「流浪の月」を読んでからというものの、すっかりファンになってしまった作家さんだ。「滅びの前のシャングリラ」や「神様のビオトープ」も勿論読んだが、その思いは変わらない。本作品についても、SNSやレビューサイトで高い評価になっていることを知り、いつも行く書店で見つけたときは、もちろん速攻で手に取っていた。
読み始めたのは年末も迫った12月半ばくらい。一時期冷めていた読書熱が復活したところだったということもあり、主に通勤だけの時間だったけど、10日満たずして読み終えた。
感想としては、「やっぱり良かった」のひとこと。スッと心の中に落ちてくる文体。描写。登場人物のセリフ。個人的には、縁切り神社という舞台を中心に描かれる人と人との交流が、とてもドラマチックに感じた。特に桃子の辛い過去が書かれたシーンは、感情移入し過ぎて息が詰まりそうだったし、メンタルを病んでしまった基の苦しい心理描写は、まるで自分にも投影するかのようだった。その意味では、統理と百音の存在は、このストーリーの精神安定剤。さすが神主だけあるなーと。
気に入ったセリフもたくさんあって
根本的な解決にはなっていないけれど、生きていく中でなにかが根っこから解決するなんてこと滅多にない。しんどい。つらい。それでも明日も仕事に行かなくてはいけない。だからとりあえず明日がんばるための小さな愉しみを拾い集めていくことが優先される
何も持ってないのは哀れかもしれないけど、気楽でいい場合もあるよ
嫌な思いをすることも、まるっきり無駄ではない
などなど、思わずノートに書き残したくなるような表現たち。
仕事とか家族とか友達とか、ちょっと人間関係がしんどいなってときとか、自分の将来がモヤモヤしたときとか、きっとまた読みたくなる作品。もう一度書くけど、本当に良かった。
ありがとうございました。
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