暁降ちのころ

暁降ち(あかつきくたち)と読みます。40歳から始めた日常の整理、備忘録などを思うままに好き勝手書いています。

読了 神様のビオトープ

著者 凪良 ゆう

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うる波は、事故死した夫「鹿野くん」の幽霊と一緒に暮らしている。彼の存在は秘密にしていたが、大学の後輩で恋人どうしの佐々と千花に知られてしまう。うる波が事実を打ち明けて程なく佐々は不審な死を遂げる。遺された千花が秘匿するある事情とは? 機械の親友を持つ少年、小さな子どもを一途に愛する青年など、密やかな愛情がこぼれ落ちる瞬間をとらえた四編の救済の物語。


~~~~~以下、感想。~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

流浪の月を読んで依頼、すっかりその文章のファンになってしまった凪良ゆうさんの小説。そのため作者の著書は下調べ済で、この作品自体も知っていたが、いつも行く書店には置いてなかったので、ずっと読めずじまいになっていた。しかし先日、ついに中古本コーナーで発見。感覚的な話だけど、見つけたときにはまさに光り輝いて見えた。(Amazonで買えば簡単なんだけど、なんとなく本は直接買いたい派…)

ストーリーは四編で構成されるのだが、読み進めている限りでは、すべて続き物として感じるくらいに繋がりは自然だったように思う。そしてタイトルのビオトープって何?というところ。調べると「生物群集の生息空間」のことだそう。俺個人としては『人それぞれの生き方って違うんだよ』という凪良さんの想いが込められてるのかなと思ったけど、その正解発表はなく読み手の解釈に委ねられている。

「最初っから正論でこられると、議論するまでもなくそれ以外のすべてが粉砕されるからなあ。こっちは言いたいことをなにも言えないっていうストレスはたまる」という作中で気に入ったセリフ。これは凄く共感。

登場人物として出てくる幽霊になってしまった鹿野くんと、残されたうる波さん。どちらもゆったりとした雰囲気のなかに、切なさが滲み出ている。かといって決して不幸な感じが前面に出てくることはない。このあたり、やはり俺が凪良さんの文章が好きな所以。

あえて言うならば、春くんと秋くんの話が好きでした。

ありがとうございました。