暁降のころ―映画と読書のジャーナル―

暁降(あかときくたち)と読みます。もっぱら映画と小説の感想がメインです。

読了 夜のピクニック

著者 恩田 陸

www.shinchosha.co.jp

高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。それは全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという、北高の伝統行事だった。甲田貴子は密かな誓いを胸に抱いて、歩行祭にのぞんだ。三年間、誰にも言えなかった秘密を清算するために――。学校生活の思い出や卒業後の夢など語らいつつ、親友たちと歩きながらも、貴子だけは、小さな賭けに胸を焦がしていた。本屋大賞を受賞した永遠の青春小説。

 

~~~~~以下、感想。~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

2005年に開催された第2回本屋大賞を受賞(併せて第26回吉川英治文学新人賞も受賞)された本作品。前々から読みたい小説のひとつではあったのだが、どうにも巡り合うことがなく、ずっと「次回候補」に留まっていた。それが先日、いつも行く書店の中古本コーナーを物色してると、ついに見つけてしまい、もちろん即お買い上げ。

本業の仕事が忙しくて少し時間はかかってしまったものの、青春小説ということもあって比較的読みやすかった。だいたい3週間くらいで読了となったのかな。

ストーリーとしては、高校生活最後の一大行事「歩行祭」というユニークなイベントを舞台に、友情、葛藤、そして秘密の告白が織りなす青春群像劇。夜を徹して80キロ歩く、という非日常的な経験が、登場人物たちの心の距離を徐々に近づけ、自分自身と向き合うきっかけを与えていく様子が、静かな筆致で描かれている。

この小説の魅力は、他のレビューにもあるとおり、何気ない会話や細やかな描写からにじみ出る、登場人物たちの心情の揺れ。特に主人公・貴子と西脇融の間にある微妙な感情の揺らぎと、その背後に隠された秘密が、物語の核となって読者の心をつかむのだと思う。ネタバレにならないように書くと、二人の関係は、単なる青春の淡い恋ではなく、もっと複雑で、家族や過去と向き合う必要のあるテーマを内包していて、読み進めるほどに深みを増していく。

歩行祭そのものの描写についても、まるで一緒に歩いているかのような臨場感があって、夜という時間が持つ特別な雰囲気も存分に活かされている。昼とは違う空気、疲労とともに浮かび上がる本音、友人との距離の縮まり。そういうのが少しずつ積み重なって、読後にはどこか懐かしい、そして少し切ない気持ちが残る。大きな事件が起きるわけではないけど、だからこそ感情がリアルに感じられ、読み手の記憶や経験と自然に重なっていくのではないかなーと…。

最後に、気に入った作中のセリフたち。

なぜ振り返った時には一瞬なのだろう。あの歳月が、本当に同じ一分一秒毎に、全て連続していたなんて、どうして信じられるのだろうか。

何かが終わる。みんな終わる。だけど、何かの終わりは、いつだって何かの始まりなのだ。

始まる前はもっと劇的なことがあるんじゃないかって思ってるんだけど、ただ歩いているだけだから何もないし、大部分は疲れてうんざりしてるのに、終わってみると楽しかったことしか覚えていない

ありがとうございました。