- (監督) 牧賢治さん
- (出演) 窪塚洋介さん、坂口涼太郎さん、葵揚さん、橋本マナミさん、田丸麻紀さん、Jin Doggさん、長田庄平さん他
- (上映日) 2023年2月10日
- (上映時間) 94分
以下、あらすじ。(参照 Filmarks)
高木は鬱憤を溜め込んでいた。理不尽な理由で会社をクビ。妻子から突きつけられた三下り半。ようやくありついたタクシードライバーの仕事では、客から蔑ろにされる最低の日々。そんなある日、高木のもとにどん底の人生を変えるチャンスが舞い込んだ。“偶然”客として乗せた政治家・大谷が漏らした、数億円もの価値を持つ“幻の絵画”につながる手がかり。高木はサヴァン症候群により驚異的な記憶力を持つ番場、裏社会に通じる賭博狂の坂口ら、【3】という数字に奇妙な共通点を持つ同僚ドライバーと手を組み、欲に群がるヤクザ、アウトロー、闇ブローカー、ホステスらを巻き込んだ絵画強奪計画を画策。たった一夜での人生逆転を賭けた“完璧なプラン”だったが、【3】という数字がもたらす想定外の“偶然の連鎖”に翻弄され、高木の思惑をはるかに超えた結末へと走り出していく――。
牧賢治監督が仕掛けた、予測不能の強奪ミステリー『Sin Clock』。久しぶりにスクリーンに帰ってきた窪塚洋介が主演を務めるということで、期待値高めで鑑賞した一作。
【俺の評価】
⭐⭐⭐(星3つ)
どん底の人生を歩むタクシードライバーたちが、偶然手に入れた「絵画強奪」のチャンスに賭けるという、いわゆるコンゲーム(騙し合い)の要素を含んだ物語。主演の窪塚洋介は、かつてのカリスマ性を封印し、社会の片隅で冷めた生活を送る高木という男を、虚無感を漂わせた独特の佇まいで演じきっている。彼が画面に映るだけで、どこか空気がピンと張り詰めるような、あの唯一無二の存在感は健在だった。
物語の鍵となるのは「シンクロニシティ」。3時33分という数字、偶然が重なり合って進む計画。監督が独自のビジュアルセンスと音楽を駆使して構築した世界観はスタイリッシュで、邦画の枠を超えようとする野心を感じさせてくれる。タクシーという閉鎖的な空間を使いながら、じわじわと不穏な空気が満ちていく前半のテンポは悪くなかった。
ただし、正直に言わせてもらうと、ストーリーの着地に関しては少し物足りなさが残った。伏線を張り巡らせ、偶然を強調する構成は面白いのだが、物語の核心に迫る部分でもうひと押し、あるいはふた押し、こちらを突き放すような衝撃や、圧倒的なカタルシスが欲しかったというのが本音。計画が進むにつれて「おっ、これからどうなるんだ?」と前のめりになったところで、少し予定調和に収まってしまった印象がある。
脇を固めるキャスト陣の個性も強く、群像劇としての面白さはある。だが、それぞれのキャラクターの掘り下げがもう少し深ければ、ラストの展開にもっと重みが出たのではないか。スタイリッシュな映像美が際立っているだけに、脚本の「厚み」の面で少しバランスを欠いているように感じてしまった。
とはいえ、窪塚洋介という役者が持つ「何を考えているかわからない危うさ」を堪能するには十分な作品であることは間違いない。深夜の街を走るタクシー、冷たい夜の空気、そして偶然が引き寄せる破滅の予感。そういった雰囲気を楽しむ、大人のためのノワール映画としては合格点。
Amazonプライムで、深夜にひっそりと、あの窪塚さんの鋭い眼差しに酔いしれたい時にはおすすめの一本。物語の「あと一歩」を自分なりに補完しながら観るのも、また一つの楽しみ方かもしれない。
ありがとうございました。
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