- (監督) 土井笑生さん
- (出演) 倉悠貴さん、見上愛さん、見津賢さん、錫木うりさん、工藤孝生さん、池田朱那さん、川郷司駿平さん他
- (上映日) 2021年12月10日
- (上映時間) 117分
以下、あらすじ。(参照 Filmarks)
舞台は2020年の東京・渋谷。名前を失った少年、声を失った少女。絶望し、社会の片隅に生きる孤独な二人が出会い、物語が動き出す。その出会いは罪か、罰か、それとも―――。
Amazon Prime Videoでたまたま見つけた映画『衝動』。土井笑生監督の商業デビュー作ということだが、これがまた、今の渋谷の裏側に潜む「痛み」を煮詰めたような、強烈な青春サスペンスだった。これまで、いわゆる「キラキラした青春もの」もたくさん観てきたけど、今作が描き出すのはその対極にある「絶望」と、そこから立ち上がろうとする剥き出しのエネルギーだった。
舞台は2020年の東京・渋谷。コロナ禍でどこか歪んでしまったあの独特な空気感の中で、違法薬物の運び屋をして食い繋ぐ少年ハチと、過去のトラウマで声を失った少女アイが出会う。二人とも、社会のシステムからこぼれ落ちてしまった「見えない存在」なのだが、そんな彼らがラブホテルの裏口やゴミ捨て場のような路地裏で不器用に関係を築いていく姿には、観ているこちらまでヒリヒリするような痛みが伝わってくる。
主演の二人、倉悠貴さんと見上愛さんの演技も素晴らしい。倉さんの、常に何かに怯えながらも狂暴な衝動を隠し持ったような眼差し。そして見上さんの、言葉を発せない代わりに全身から溢れ出すような「叫び」を感じさせる表情。特に見上さんの瞳の強さは圧巻で、台詞がないからこそ、彼女が抱える闇の深さがより鮮明に、かつダイレクトに心に突き刺さる気がした。
監督の演出も独特で、ドキュメンタリーのような生々しい手持ちカメラの揺れと、MVを観ているかのようなスタイリッシュなカット割りが混在していて、それが不安定な若者たちの心理状況と見事にリンクしている。正直、バイオレンス描写や目を背けたくなるような過酷なシーンも多いから、決して「誰にでもおすすめできる」タイプの映画ではないかもしれない。でも、この作品が放つ「今、ここで生きている」という必死の足掻きは、今の閉塞感のある時代にこそ必要な熱量なんじゃないかと思う。
タイトルの『衝動』という言葉通り、理屈ではなく、生きるために動かざるを得ない若者たちのエネルギー。それは時として罪を生み、破滅を招くけれど、同時にそれこそが彼らにとっての唯一の「生の実感」なんだという事実に、胸が締め付けられる。ラストシーンの余韻をどう解釈するかは観る人に委ねられているけれど、エンドロールが流れる頃には、自分の中にあった「無関心」という名の壁が少しだけ崩されたような気がした。
Amazonプライムで、できれば夜中に、誰にも邪魔されずに没入してほしい一本。華やかな東京の裏側に確かに存在する、彼らの「届かない声」をぜひ感じてみてほしい。
ありがとうございました。
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