暁降ちのころ

暁降ち(あかつきくたち)と読みます。40歳から始めた日常の整理、備忘録などを思うままに好き勝手書いています。

読了 オオルリ流星群

著者 伊予原 新

hitocinema.mainichi.jp

見えない星が、人生の幸せを教えてくれる。
「あのときのメンツ、今みんなこっちにいるみたいだぜ」「まさか、スイ子か? なんでまた?」スイ子こと、山際彗子が秦野市に帰ってきた。手作りで太陽系の果てを観測する天文台を建てるというのだ。28年ぶりの再会を果たした高校時代の同級生・種村久志は、かつての仲間たちと共に、彗子の計画に力を貸すことに。高校最後の夏、協力して巨大なタペストリーを制作した日々に思いを馳せるが、天文台作りをきっかけに、あの夏に起きたことの真実が明らかになっていく。それは決して、美しいだけの時間ではなかった。そして久志たちは、屈託多き「いま」を自らの手で変えることができるのか。行き詰まった人生の中で隠された幸せに気付かせてくれる、静かな感動の物語。


~~~~~以下、感想。~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

いつも行く書店で、次に読む小説をすでに2冊手に取り、レジに進もうと思っていたときにたまたま目に入った。そのタイトル、表紙のデザイン、そして宇宙飛行士の野口さんのコメント。気づけば追加でレジに持って行っていた。おそらく天体観測、高校の同級生だった45歳、夏休み、この3つが俺のなかのどこかに引っ掛かったのだと思う。

 

普段、特に季節を気にしながら小説を読むことはないが、この作品だけは夏に読んだ方が良いのではないか、子どもたちが夏休みに入る前の7月初旬から読み進めた。結果、大正解。通勤時間の合間で読み進めたので波はあったが、言い表しようのない感情が沸々と湧いてくるような素敵なストーリーだった。

作中の登場人物たちが45歳。彼らが高校生だったときのエピソードと、それぞれの人生を進めてきた結果の現在が「天文台づくり」を通じて、織り交ざっていく。俺自身が今年で41歳だということもあり、年代も”どストライク”。読んでいるうちに20年以上も前となってしまった高校時代を思い出す。実家の薬局を継いだり、学校の先生になったり、仕事を辞めて弁護士を目指したり、実家に引きこもったり、実際の俺たちも似たようなものだからこそ、作品のなかに引き込まれる。青春時代の「やり残し」、大人になってからあらためて挑戦しようって思うタイミングはあるのだが、色んなハードルが出てきて実施は動けないことがほとんど。そのジレンマをこの作品は見事に回収してくれる気がした。

残念ながら、ブレッド&バター「SUMMER BLUE」、来生たかお「浅い夢」、そして松任谷由実「ジャコビニ彗星の日」といった音楽は全然分からなかったのだが、ラジオを通じて繋がるっていうところは凄く懐かしい。あの時代、ひとりに1台のスマホもテレビもないから、深夜の娯楽といえばラジオ。今でもラジコからSpotifyで聞いてるけど、ナインティナインのオールナイトニッポンを友人から教えてもらって聞き始めたのが高校2年生のとき。深夜に触れる音声メディアのノスタルジックな感じとか、今の子は分かるんだろうか。

そういうことを考えていると、自分自身の青春Songを聞き、特に用事もないけど旧友たちに連絡をとりたくなってくる。
ありがとうございました。